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2006年10月17日
嗚呼、か弱き獣

この広大で寂しげな世界には、
圧倒する程、勘の鋭い人がいる。
彼らは、一般人の顔をして、まるで、あたかも普通の人のように
日常を営んでいる。
まるで、六本木の雑踏に紛れるKGBの末裔のように。
あるいは、ボストンホテル隣のピザ屋から顔を覗かせる異性人のように
彼らは、傍目からは、そうは見えない。
しかし、彼らは半端はない。
腰が抜ける程の眼光と
そして、夢を切り裂いてしまう程の鋭利さを持って
往来を渉る。
控えめに言っても、彼らと一戦交われば腰が抜けること必定。
彼ら/彼女たちと争うことは、是が非でも避けるべきだ。
どれ程の事情や事由があろうとも、その一線だけは越えてはならぬ。
例えるならば、
「家族八景」の七瀬のように、
「羊を巡る冒険」のキキのように、
「ジョセフジョースター」の飛行機のように、
彼らは、ある意味、人間を逸脱した存在である。
良きも悪くも。
あまりにも彼らは世界を見通してしまう(コリンウィリアムズ)のである。
戦闘機に竹ざおで戦うようなことは辞めたほうがいい。
そんな玉砕も彼らには何も与えはしない。
見た目はわからなくとも、勘の鋭い者は幾らでもいる。
現代のホームズは巷に溢れている。
ソリッドでシャープな優しき獣。
女性は嗅覚も男性に比べて数百倍という節がある。
そして、音の高低を見分ける能力も格段に優れているという話がある。
ゆえに、例えば世界で「男性の方が浮気をする」と認識されているとするならば、
それは、「女性が浮気を見抜きやすい」ということであって、
共犯者は常に男女共に同数いる。
(実のところは、そうともいえない。同性愛のケースもあれば、
異性は浮気と知らずに存在している場合があるからで、その場合は共犯にはならない)
例えば。
例えば、何かの本で読んだ話。
あなたが結婚しているとして、火遊びをすることになり、
「今日は、仕事で帰りが遅くなる」と妻に連絡をしなければならないとする。
そんな時、もし男性のあなたが電話をすると、
その嘘がばれる可能性は非常に大きい。
勿論、一概にはいえない。
しかし、このたった一行だけでも、女性という尊いクリーチャーは
貴方の声の高低や振るえ、あるいはニュアンスで嘘を読み取ってしまう。
そして恐ろしいことに、
それは意図的ではないのだ。
そこが、「勘の鋭い人」の恐ろしいところである。
その人たちは、別段、日常にアンテナを高く張り巡らしているわけではない。
そうではなく、不断からアンテナの感度の平均値が抜群に高いのだ。
それゆえ、嘘は、いとも簡単に彼らのフィルターにかかってしまう。
「ん?いつもと何かおかしい」と彼らの無意識のアラートが鳴り出す。
そして、そこからその事象に関連する様々なフラグメントが無意識下から
呼び出され、そして組み合わせられる。
まるで、そこにある生物が生まれ来るように。
YES、NO、YES、NO、YES、YES、YESと彼らのスーパーコンピューターは
あらゆるあなたの振る舞いや過去、事象から、仮説を組み立てるに至る。
ここまで約数分。
長い時は数日かかることもあるだろう。
その間、コンピューターはずっと稼動し続ける。
そして、ついに仮説をはじき出す。
反証も出来ず、そして、とてつもなく精度の高い仮説を。
さらには、彼らはその仮説を被告人の前にいきなり出すことはしない。
その仮説を補強するための定理を導き出すのだ。
カマをかける、なんていう生易しいものではない。
ある意味、13階段へのトラップであり、不断の尋問であり
最後の審判である。
勿論、完璧なる嘘をつける人もいるだろう。
例えば、嘘発見器で嘘がつける人も居るくらいに。
しかし、さりとて、勘の鋭い人との頭脳戦はオススメできない。
なぜならそれは体力戦になってしまうからだ。
ひとつの嘘をつくと、それを塗り固める倍数の嘘が必要と言われるように、
日常の生活で、一つの破片を隠しながら整合性を欠かすことなく
パズルを仕上げていくのは、神経の磨耗し減らし続ける。
と、最近、ある郵便物から嘘をばれた人の話を聞いたので
それに想起され書いてみた。個人的に思うところは何もないという注釈は付けておく。
実際、郵便物は危険である。
ここ数年で郵便物で嘘がばれたという話は3件程聞いた。
多いのか少ないのかわからないけれど、とりあえず判断を保留したいデータではある。
信じない人もいるかも知れないけれど、
彼ら/彼女らは、本当に見えないものが見えるのだ。
なぜ、そんな一瞬の一言から全てを見抜くのだ、と。
それはきっと推理小説の探偵たちのようなイニシエの生業たちの
末裔なのだろう、と思う。
彼らは言葉だけで見抜くのではないのだ。
雰囲気、たちぶるまい、何気ない仕草。
そんな些細なことから全てのデータを結びつけてしまう。
しかし、彼ら/彼女らは、あまりにもそんな鋭さに
疲れもしている。
ゆえに、敢えて、その判断に目をつぶることだってある。
脳の奥底にしまいこんでしまうこともある。
勘の鋭さは、人生を生きにくくする。
電話の話し振りや、あるいは日常の目線などで
相手が自分のことを好いているか(恋愛的な意味はなくとも)、
あるいは、どう考えているかがわかってしまうのだ。
そんなタフな人生に彼ら/彼女らは飽き飽きする。
彼ら/彼女らにとっては、空気を読めない人は冗談にしか見えない。
演技をしているようにしか見えない。
なぜなら、彼ら/彼女らにとっては
ありありの人間の心情が見えてしまうのがスタンダードゆえに
周りの人々もそういうものだと考えている。
まさか、世界の人々の表情には、もっとマスキングがかかっているなんてことは
思わない。そういう勘の鋭さはもちあわせてはいない。
もっとも、持っていた所で、それは単純に
より、彼ら/彼女らを苦痛にするだけだ。
そんな彼らにとって人間関係は、よりヘビィなものになる。
相手の顔色が全てわかってしまえば、
それは、どんな太い神経を持っている人だろうと
神経をすり減らさざるを得ない。
そして彼らは孤独を愛し、洞窟に帰る。
それが、彼らが世を厭うことの根源にはある。
さりとて、春になれば祠より顔を出し、
そして新春の息吹に目を細める。
ドストエフスキーは言いました。
真実を語るものは機知のない人間だけである
フィリップフォレスト
私小説は虚構を重ねて真実にせまる
そしてモンテーニュ@えせー
真実でさえ、時と方法を選ばずに用いられて良いということはない
by真実で検索
「注釈」
上記は数週間前だか数ヶ月前だか数年前だかに書いていたエントリー。
丁度、近頃、似たような話をしている方がいらっしゃったので
思い出してポスト。
投稿者 kaz : 2006年10月17日 01:41
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