2006年08月15日
距離と郷里と矜持

大阪に居る。
お盆という事で郷里に戻っている。
今や大阪には新幹線で帰るよりも飛行機の方が
速くて、時には安い。
去年のお盆はバイクで帰って切符を切られた苦い思い出がある。
あの暑い中の二輪車は拷問だ。
そのバイクも半年前に同じく大阪から東京までの往路で
お釈迦になってしまった。
空港で「東京バナナ」を買い込んで、新作という「東京イチゴ」を
買い足した。
機内はお盆で満席で加えて落雷でフライトは順延だ。
関西空港からは南海線とJR阪和線の2本が走っている。
阪和線に乗り、いつもの駅で降りる。
中学生の頃は、この駅に張ってある「そうだ、京都行こう」のポスターが
欲しくて、もらおうとしたけれど貰えなかった。
それでも京都への愛執は欠かした事はない、多分。
そんな駅前のロータリーは満面の大阪の匂いがした。
久々に運転する車の快適さに恍惚を感じ、
ささやかな渋滞も気にならない。
助手席に乗る父は居眠りをする。
ガムを噛みながら、ラジオから聞こえてくる70年代の民謡に鼻歌う。
たった数日だけれども、
久々の実家は、なんと静寂に包まれた世界か、と
驚きに値する。
部屋の窓からは一面の古墳の緑と、
まさに「宇宙直結の(C 三浦しをん)」青空が広がっている。
蝉の声だけが部屋を満たし、
もはやipodでさえも居場所はない。
空気が違う。
葛城山からの風はひんやりというよりも
少し乱暴に部屋の風鈴を鳴らす。
丁度、海辺のカフカに出てきた森小屋の様な。
本当の静寂というものは耳が痛い。
それは静寂というものに我々が慣れて居ないからだ。
耳鳴りのような、静かな音が脳髄を揺らす。
こんな静かな環境で、夜風が心地よい場所ならば
いくら作業がはかどるだろう、とふと詮無い事を考える。
海も良いけれど山も良い。
そして、自然が須らく良いのである。
インターネットに繋がる事を躊躇してしまう程の静けさで、
キーボードを打つ事さえも躊躇してしまう。
静けさだけが支配する街の深夜に
夜風に吹かれながらポストカードに筆を滑らせた。
自分の生活圏より地理的距離が離れると
何かしら寂しさが襲う事がある。
誰かに電話しようとも考えるけれど、
自分が今居るあまりにも静寂な世界の中で、
東京の喧騒に包まれた人々に電話をかけるのは、
何かしら不合理な気がした。
従兄弟の子供達に会った。
子供達が可愛いのは、
「可愛くなければ可愛がってもらえない」からだ、という話を聞いた事がある。
つまり可愛くなければ、飯ももらえないし世話もしてもらえない。
つまり生き残る為に子供たちは可愛くなった、という言説がある。
勿論、これはある種のトートロジーを前提としたjorkingなのかも知れないけれど、
子供達を見ていると、あながちそれは嘘ではないように思える。
部屋には、祭囃子の音が聞こえてきた。
盆踊りだ。
風情がある、と言えばそれだけの話。
その1行で終わってしまう話。
深く考えるならば、郷里に根ざした数十年、あるいは数百年の歴史を持つ
「文化」が、この時代にも生き残っている事に驚きを隠せない。
風に揺らめく漁り火を思い出させる。
だんじりの季節まであと数ヶ月。
お盆が終わると、街は、あるいは村は俄かに色めき立つ。
太鼓と笛の音が街中に響き渡る。
体力づくりに軽トラをひっぱる青年団の人々が
往来を駆け回る。
祖母と祖父の墓参りをする。
灼熱の太陽に照らされても
墓石は、じっとしたまま動こうとはしない。
線香の匂いが墓場に似合う花を舞う蜂を取り巻いて、
かろやかに唱えるお経の声は
いつまでも変わらない風景に思える。
きっと100年経っても、この風景は同じように
郷里に毎年繰り返される風景なんだろう、と
携帯メールを打ちながら考えた。
妹が買って数ヶ月のパソコンのプリンタが壊れたという。
しょうがないので、彼女の部屋に行く。
「時間*千円な」と呟きながら。
いつまでも小学生のように思っていた妹も、もう大学生。
パソコンなんていうハイカラなものを使うようになった。
ポートの設定をしなおし、プリンタは小気味良い音を立てて
紙を排出する。
「起動するのに時間がかかるんやけど?」と、厄介な問題を投げられて
「買い換えたら?」とお茶を濁す。
愛犬のスモモは暑さにうなだれ、不機嫌そうに片目を開ける。
久々の私には、愛想程度の舌を出す。
尻尾を振ってくれても良いのに、と思いながら
彼女には彼女なりの事情がある。
生きとし生ける者は皆、必死で生きているのだ。
カワウソだろうとオニヤンマだろうとビーバーだろうと。
おかんがお好み焼きを焼いてくれた。
あまり肉を好まない私の為に
海老が大量に入ったお好み焼きだ。
三枚も食べれば気分が悪くなってしまった。
青海苔、芥子、鰹節。
お好み焼きは羅針盤、活版印刷術と並ぶ世界の三大発明の1つ。
そして、麦茶をぐびぐびと喉に流し込む。
さてさて、今日は戦場に戻らなくては。
Let's Roll
投稿者 kaz : 2006年08月15日 17:08
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コメント
あらま。
里帰り中?
2度目とはいえ、こっちの暑さは堪えますぜ…。
投稿者 gishin : 2006年08月15日 23:37
暑いよねえ。笑
東京に戻った!
ほぼとんぼ返りっす!
コメントありがとうー。
投稿者 原田 : 2006年08月16日 00:36
おひおひさおーひさ。
盆は帰省してましたか。
こちらは先月から休み無しで仕事っす。
久々に読ませていただいました。
「葛城山」が懐かしいってなんのって。
小学校か中学校の時登った記憶がありまするが。
また十何年ぶりぶりにあいたいですな!
投稿者 techan : 2006年08月19日 12:46
おー、お久しぶりです。
先月から休みないの?それはえげつないですなぁ。
葛城山は僕は最後にいつ登ったかなぁ。
バイクで事故りかけた覚えだけがあります。
また是非。コメントありがとう!
投稿者 原田 : 2006年08月19日 17:17