
電車にのることがある。あの機械的な乗り物。でかくて、そして無機物であり、何かしら寡黙。レールの上だけを走ることを定められた運命。東と西への定められた永久ピストン機関。get inよりもget onな入るではなく、乗るべき対象としての電車。
そんな電車に今日もあなたは載る。私も乗る。ルーティンとしての通勤。良きも悪しきもそこには存在しない。不都合なき日常に取り組まれた移動機関としての電車は今日も多くの人を運び、そして多くの人の朝と夜に脇役として登場する。
そんな電車であなたは本を読む。私は本を読むあなたを見る。電車の中では、本を読む人よりも携帯電話をいじる人が多い昨今。つい、あなたは、あなたが何の本を読んでいるのかが気になる。
誰の小説か、どんなビジネス書か、いかなる学術書か。あなたの髪型や服装、雰囲気からあらゆるものを想像し、そして、それを楽しむ。国内で毎年毎年6万部だか7万部数の書籍が出ている昨今では、意外と同じ本を読む人に出会うことは少ない。たとえベストセラーとはいえ数十万冊。1億人がいる日本では、その数は1%弱にも満たない。
そう考えると、同じ本を読んでいる人と出会えることの嬉しさは、なんとも言いがたいものがある。推理小説だと思わず、犯人を叫びだしそうなほど嬉しい出会い。あるいは、その読んでいる本から、その人の性格がわかった気にもなってしまうほどの錯覚を本はあなたに与える。
個人的な経験では、自分が読んだことのある本を他の人が読んでいるのを見たことは数えるほどしかない。覚えていないだけかもしれないけど。あるいは、そもそも私は、電車を苦手とし、ほとんど乗らず、乗っても自分の読書にふけるからかも知れない。
ベストセラーでは、リリーフランキーの「東京タワー」。あるいは村上春樹の何かしらを読んでいる人とであった記憶はある。さほど珍しい本ではないので、どこで見かけたかさえも覚えていない。
他には新宿鮫、宮部みゆき、村上龍「半島を出よ」、森博嗣あたりは読んでいる人を見かけたことがある気がする。この辺りの有名どころになってくると、何を読んでいるかよりも、どこを読んでいるかの方が気になったりする。思わずその人が読んでいる本のページ内容が見える満員電車の効用はそんなところにある。
変わったところでは、タンザニアの人が「罪と罰」を読んでいた。それには、思わず声をかけてしまったけれど、彼はいったいラスコリーニコフに何を見ていたんだろうか。それは結局わからずじまいだ。そして、他には、メキシコの地下鉄で出会った人が読んでいたガルシアマルケスの百年の孤独。なんとも感想を聞きたくてしょうがない本の筆頭格だ。でも、彼はその本を読みながら寝ていたので声をかけるタイミングを失ってしまった。今思い返しても残念だ。
そう。ですから。ですから後生ですから。電車で本を読む時には、カバーをかけるなんて野暮なことはしないで下さい。そこから生まれる何かしらだってあるのかもしれないのですから。
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コメント (5)
はじめまして。
半年ほど前から覗いています。
先週くらいから本にカバーをかけ始めました。
確かに僕も他人の本は気になります。
持ちつ持たれつ、今日からは外して電車に乗ろうかと思います。
投稿者: ixao | 2007年11月26日 10:16
日時: 2007年11月26日 10:16
優しさが伝わってくる素敵な文章ですね。
投稿者: 明日美 | 2007年11月26日 23:26
日時: 2007年11月26日 23:26
とっても小さなことから出会いに繋がるんですね。
そう考えると出会いの費用対効果は計り知れないものに・・・!
ところで、タイトルの背景のグラデーションガとても素晴らしいのですが、スタイルシートでやっているのですか?サイドバーや各区切りに使われていますが、是非知りたいです。
投稿者: yama | 2007年11月27日 14:30
日時: 2007年11月27日 14:30
今年に入り、めっきり読まなくなった、小説。
ビジネス書籍はかなりの頻度で目を通しますが、その分、ガクンと読まなくなったのが、小説です。
(山田詠美、三島由紀夫は別格とする)
そんななか、11月に入り、スッコーンと落ちた小説が!
井坂幸太郎さん・・・・原田さん、読まれました?!
私はたまたま先週インフルエンザで倒れ、暇ひまヒマで死にそうになっているとき、見るに見かねてフラットメイトが貸してくれたのです・・・が。
なんで、今の今まで、彼に出会わなかったんだろう・・・
最高に面白い緻密なストーリー構成に、眼から鱗ポッローってなりました。『オデュボーンの祈り』『ラッシュライフ』『重力ピエロ』・・・・・・彼の物語は、すべてつながっているの、だまし絵だよ。原田君、ほんと、騙されたと思って、ラッシュって、ピエロって。。。 わたしはここ1週間、彼まみれです。
中1のとき、『真夜中は別の顔』を読んだばりの衝撃でした(笑)
投稿者: yai | 2007年11月27日 21:17
日時: 2007年11月27日 21:17
>ixaoさん
コメントありがとうございます。カバーかける人って意外と多いですよね。是非是非今後はナシでお願いできれば幸いです!
>明日美さん
おお、優しいですかね。それは光栄です。多分、本への優しさは、そうそう負けない気持ちがあります!
>yamaさん
どうなんでしょう。これは、どっかから取ってきたテンプレートだと思います。お役に立てず申し訳ありません。
>yaiさん
わぁ、ありがとうございます!伊坂氏は私も大好きです!この感動を共有できて光栄で御座います。個人的には「重力ピエロ」が大好きな感じです。
シドニイシャルダンは「運命(だったかな?)が好きです。
いつも暖かいコメントをありがとうございます!
投稿者: 原田 | 2007年12月02日 16:51
日時: 2007年12月02日 16:51