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真夏の夜の夢

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夏の夜風に敬意を表して情緒編。

諸君、夏が来た。
葉月である。

八月の花といえば、
ひまわりであり、ハイビスカスであり、桔梗であり
蓮だそうだ。

燦燦と降り注ぐ蝉の声と
吟々と鳴り響く夏の陽光。
19時を過ぎてもまだ残照は街の営みを照らす。

子供の頃は夏の空が永遠で、
空ばかりを見上げて居た。
入道雲が何だかいけすかなくて、
飛行機が描く一筋の雲が好きだった。

夏休みの友、ラジオ体操、林間学校
そんな古語がいつしか過去の遺物となって十数年が経つ。

今やキンキンに冷房で冷えた部屋では
カタカタとキーボードの音しか聞こえない。
たまに冷蔵庫がくぐもった不穏な音を発する程度。

夏の夜は窓を開けると、痺れる程の熱い空気に
過去の残響が閉じ込められているような気がする。

街中で行き交う浴衣のアベックたちは、
一種の夏の風物詩としていつしかの夏を追憶となる。
その様は茫洋たる夏の蜃気楼に彷徨うツバメを思い出させた

追懐、追想、後顧、回顧、回想、首を巡らす。
過去を思い返す同義語は多い。
そしてすれ違う人の香水と汗の芬芬が、
また異国の夏を喚起させる。

今年の夏は海、あるいは花火に行けないかな、と考える。
いや、そうではない。
きっと今からでも奴らに電話をして「海に行こう」と言えば行くだろう。
でも、そういう事じゃないのだ。
その電話のボタンを押すまでには至らないし、
それに、そういう事じゃないのだ。

2002年の今日の日記を見てみると、
近所の魚屋に海老を買いに行っていた。
そして実家に電話をしていた。
その日の記憶は何もないけれど、
なんだか、その頃の匂いと音だけが蘇って来る。

そんなものだ。
人は過去の特定の日々を思い返すのではなく、
現在の些事が過去の瑣末な何かとリンクし
それが過去を形成する。

しかし、何がなくなったのかは人は解からない。
本当になくなったものは、目に見えるようなものでもなく、
ましてや知覚さえ出来ないものなのだ。時に。

夜風が涼しい夏の夜。
あらゆる憂鬱や懸念、物憂いを全てなぎ倒すような白南風に揺られながら
けやき坂のイデー カフェであなたは言う。

ないものがあるんだよ
と。そこだけを取ると禅問答のような言葉。

デジタルカメラとフィルムカメラの違いのコンテクストだった。
写真はデジタルになって、銀塩カメラが持っていた何かをなくしてしまった。

けれど
そうじゃない。

それは時系列で見るからそう見える。
もしデジタルカメラが先でフィルムカメラが後に登場していたならば、
我々はデジタルカメラが持っていた「何か」が、フィルムカメラになって、なくなった事にいつしか悲しむ事になる。
デジタルでも銀塩でも、どちらかしか持って居ないものがあって、
それが移り変わると人はなくなったものを悲しむ。
過去を思い返して、今にない過去を愛しむように。
砂上の楼閣を愛でるように。
何であれ、あるいはいつであれ、「無い」ものはいつもある。
それが、つまり「ないものがあるんだ」という言葉だった。

思い出も同じである。
思い返すと、「あったものがない」のだけれど、
きっと今も見返すと「ないもの」があるのだろう。
そして同時に「ないもの」はないという過去の選択肢の結果として存在して
今、我々の手の中には「あるもの」だけがあるという事になる。
突き詰めて言うならば。

伊坂の「重力ピエロ」を読んでいた。

「本当に深刻なことは陽気に伝えるべきなんだよ」
春は誰に言うわけでもなさそうで噛み締めるように言った。
「重いものを背負いながら、タップを踏むように」

「ピエロが空中ブランコから飛ぶ時、みんな重力のことは忘れているんだ」

この言葉が印象的だったというよりも、
丁度、似た言葉をこの間、聞いたばかりだったから、
強く頭に残った。

近くの西公園のブランコから飛んだ夏の午後を思い出した。
その頃はブランコの柵なんか怖くなかった。
ただ遠くに飛ぶ事しか頭になかった。

本当に何も怖くなかった。
落ちる事や失敗する事なんて考えていなかったのだ。
空は無限で時間は永遠だった。
ただ、風を切る自分の感覚だけが全てだった。
本当に怖くなかったんだ。

夏の風は何かしらの言葉を運ぶ。
真夏の夜の夢のように。


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コメント (2)

Maki:

久々ねぇ。元気に仕事しているようだね。

匂いかぁ・・・わかるそれ。
季節の変わり目なんか特にそういう思い出さなくてもいいような記憶とか、懐かしいと思う記憶が頭の中を横切ってく。

そういえば前に書いてあったエビエビエビの話だけど、エビといえば、よくスタテンでエビ入りのシーフードベジタブルみたいなやつ食べてたよね!?ちがったかな?
メイメイだっけか!!デリバリーしてたなぁ・・・なんて思って読んだ。最近車えび食べました。やはり北海道で食べるなら甘エビがボタンエビですなぁと。

原田:

ども!おひさ。
お陰様で何とか生きてますよ。

そうそう、季節の変わり目って
えらく世の中に情緒が溢れるんですよ
夏の終わりとかね。あれなんでだろうなぁ。
気のせいかなぁ

あと、シーフードデライトね。笑
よく覚えているなあ。
メイメイも正解。あれうまかったなぁ。

北海道の海老も上手そうだね。
温泉に行った時は、あま海老もくれぐれも宜しくであります。
コメントサンクス!

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