平気だよ。
そんなこと言われても平気だよ。
何言われても平気だよ。
昔、強がりな女の子が居た。
たとえるならば、絶対にスカートは履かないと、
仏壇に手を合わせて決めているような
頑固者だった。
キュロットは、セーフだった。
強気なので、いつも男の子と喧嘩していた。
裏拳が得意だった。
ただ、裏拳をかける時に、
「エイ」と叫ぶので、
鼻腔を直撃することは、まあ、無かった。
せいぜい年に数人程度だ。
しかし、彼女にも平気ではないものがある。
そりゃ、幾らだってある。
生きとし生きる者、何かしら苦手なものはあるものだ。
それこそ、ゴキブリであったり、
セロリであったり
お化け屋敷であったり。
彼女にとって、孤独は平気だった。
裏切られることも平気だった。
しかし、時計をはめるのは平気じゃなかった。
刑務所に入ったことのある人は、
時計を嫌う。
そのように彼女も、腕時計が嫌いだった。
ニモになりたかったわけではない。
ましてや、カウガールになりたかったわけでもない。
ただたんに、腕時計の、あの居心地の悪さが
平気ではなかった。
右手も左手もダメだった。
逆さに嵌めても無駄だった。
足に嵌めたら、大丈夫だった。
昔の話だ。
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